SONY PMW−350 Test Report
REPORT 宮本 亘
佐々木 基成
2010年1月、SONYからXDCAM EXシリーズのショルダーカムコーダー PMW−350 が発売された。
以前、深夜の連続ドラマを撮影した際にメインカメラにPMW-EX3を使用した事があった。低予算だったので安価なカメラを選択する必要があった訳だが、その中でPMW-EX3を選んだのはレンズ交換が可能であった事が大きかった。しかし、実際にはPMW-EX3は1/2インチのセンサーサイズなので、画角の変化を考えると既存の2/3インチ用のレンズがあまり有効ではなかった。
その点、このたび発売されたPMW-350には2/3インチのFull HD Exmor CMOSというセンサーが搭載されたので、既存のレンズを使用できる。この事はカメラマンにとって画作りする上でとても重要であり、カメラのオペレートにおいても良い結果をもたらすに違いない。
このPMW-350はカタログスペックを見てみると、SONYの上位機種をも凌ぐような数値が並ぶ。だが、実際に撮影してみるとスペックほどの性能を感じられない事はよくある事である。ところが、このカメラの映像はスペックが示すように実にキレイだ。本体価格が約200万円とは思えないほどにキレイである。PMW-EX3もキレイなカメラではあったが、それ以上であるのは間違いない。安価なカメラにありがちな、画質の悪さをごまかす為の過度な味付けなどは感じられない。実に素直な映像という印象を受けた。
私見ではあるが、一番良いと感じるのが黒の表現である。SN比がとても良くノイズのない美しい黒が階調豊かに表現されている。スペックだけでなく見た目の印象としても放送用HDカメラと同等の解像度をもっている事が十分に感じられる。
また、ドラマなどでの使用を想定した場合には、よりクオリティーの高い映像表現が求められるので、きめ細やかな映像調整が必須である。その点においても多様な調整項目と調整幅が用意されており、SONYの上位機種と同等といっても良いだろう。内蔵されたガンマカーブは6種類あるが、さらにSONYのF23などに搭載されているハイパーガンマも4種類搭載され、まさに上位機種並みといえるのである。
また、新しい機能としてはALAC(Automatic Lens Aberration Compensation)という、個々のレンズ特性に応じた補正値を適用する事により色収差を補正する機能が搭載されている。
では、実際の使い勝手はというと、PMW−350は3.2kgと軽量でありCMOSゆえのファンレス構造で、さらにS×Sによる収録のためモーター等のメカニカルな部分がないことも相まって、約18wという低消費電力を実現している。高画質かつ低価格なショルダーカムコーダーPMW−350はENGなどではまさに即戦力なのではないだろうか。
テスト当日はCity Tek製の160w 11Aというリチウムイオンバッテリーを使用したが、約半日のテスト撮影を終えた時点でカメラ本体のバッテリー残量表示によると、30%ほどしか減っていなかったのには驚いた。さすがに実際に仕事で使用した場合にはここまでの数値が出るとは思えないが、やはり低消費電力のメリットは大きいだろう。
ビューファインダーにはPMW-EX3と同様の約92万画素の3.5型カラー液晶ビューファーが採用されている。とてもキレイで良くできた液晶ではあるがPMW-EX3で使用した経験から、正確なフォーカスをとる為には少しサイズが小さい。ビューファー上でフォーカスがあっているように見えても、編集室のマスモニで確認すると若干あまいという事が何度かあった。しかし、このビューファーはコネクター接続なので、他のビューファーに交換が可能な構造になっている。また、カメラの映像出力端子にはHD-SDIやHDMIがあるのでもっと大きなモニターに接続するのもいいだろう。
カメラ本体のスイッチ類の配置は放送用カメラを踏襲しており、戸惑う事はなかった。また、NDフィルターが放送用カメラと同様の1/4 , 1/16 , 1/64 になったのもありがたい。
PMW−350は基本的には業務用という位置づけの製品である。
放送用にはない様々なインターフェイスを持ち、業務用ならではの利便性の高い機能なども搭載されている。それでいて放送用に匹敵する高画質を合わせ持った、今までにないポジションのカメラかもしれない。
CMOSによる低消費電力と記録メディアの大容量化により長時間収録も可能となった。高画質、長時間収録さらに低価格というPMW−350。
CMOSセンサーによる動体歪みやフラッシュバンドなどの問題は依然としてあるものの、PMW-EX3などが受け入れられた背景から考えてもPMW−350も概ね好意的に受け入れられるであろう。
PMW−350は今後発売されるカメラの一つの基準になる、そんなカメラかもしれない。
PHOTO GALARY